3.パプアニューギニア航空の格安航空券でシドニーへ向かう

とうとうオーストラリアへ旅立つ日がやってきました。昨晩は普段と変わりなく寝付き、今朝も清々しく目を覚ましました。いつもと何ら変わらない朝でした。母親に頼んで最寄の駅まで車で送迎してもらいます。埼玉県の本庄駅から上野駅まで鈍行でおよそ2時間、その後成田空港まで京成スカイライナーで1時間の道のりです。

沈む夕日に染まる雲

上野駅に着いたとき、お気に入りの腕時計の針が止まっていることに気が付きました。どうやら電池が切れたようです。「出国後でなくてよかった」と思いながら、どでかいスーツケースと共にアメ横を彷徨いました。小学生の頃、友人と二人で大冒険したアメ横の懐かしい記憶が蘇りました。時間には余裕をみて家を出てきたので、余計な心配をすることはありませんでした。無事電池の交換を済ませ京成スカイライナーに乗り込みます。その頃、太陽は沈みはじめ、辺り一面をオレンジ色に染めていました。期待も不安も影を潜め、ただ「僕は生きているんだな、、、」という生の実感に包まれていました。

成田空港には、北海道の利尻島でアルバイト仲間だった友人が見送りにきてくれました。数ヶ月前、アメリカに留学する友人を見送りにきた場所で、今度は自分が海外に旅立つ側としてここにいることがどこか不思議でした。空港ロビーの喫茶店で出発までの時間を潰します。数時間後、ずっと憧れだった海外に旅立つわけですが、どういうわけか現実味がありません。ほろ酔いにも似た感覚で、なんだかボーッとしていました。この間どんな話をしたのかまったく覚えていません。

やがて友人と別れて出発ゲートに向かいます。「一歩一歩踏みしめる」、そんな状況でした。空港内を歩くことがこんなにも新鮮な気持ちを呼び起こすなんて想像もしていなかったことです。まさに新しい世界が僕の目の前に開かれようとしていたのです。

夕暮れの静かな町並み

しばらく待機しているとやっと搭乗ゲートにパプアニューギニア空港のキャビンアテンダントが集まってきました。薄い緑とビビットな黄色が印象的な制服に身を包んだ彼女たちは、皆肌が黒く少しふっくらしていました。この頃になると日は完全に沈み、窓の外では航空機や作業車のライトが点滅していました。僕が購入した格安航空券は、パプアニューギニアの首都ポートモレスビーで乗り継ぎます。トランジットでポートモレスビーに待機すること、なんと13時間!これが格安航空券であった最大の理由だったのかも知れません。

ポートモレスビーに到着したのは深夜の1時を過ぎていました。持ち物検査を受けた後、椅子だけがズラッと並べられている部屋で乗り継ぎ便を待つのです。ほとんどの乗客が横になり仮眠を取っていました。せっかくなので英語の勉強でもしようかと参考書を広げましたが、数分もしないうちに飽きてしまい僕も横になりました。

朝日が昇りはじめると、ポートモレスビーの全景が目の前に広がりました。殺風景という形容が実によくあてはまります。太古から変わらぬ景色のようでした。ここポートモレスビーの空港内には、小さなお土産屋さんが一つとトイレしかありません。13時間待機している間、何か食べるものを購入したかったのですが、へんてこな工芸品しか販売されておらず、出発の際に友人が手渡してくれた京都のお土産生八つ橋が唯一の食料となりました(助かりました~)。成田から同じ便に乗ってきた乗客や後から到着してきた乗客は、次から次に乗り継いでいきます。僕はそんな彼らを横目に椅子しかない空間でひたすら時の経過を待ち続けていました。閑散としたトランジットルームでは、暇を持て余した空港職員が片言の英語で話しかけてくれることもありました。彼らは勤務中なのか休憩中なのかよくわかりません。とにかくラフな職場のようです。そして夕刻、とうとう僕の乗り継ぎ便が電光掲示板に表示されたのです。このとき初めて気づいたのですが、まったく同じ航空券でシドニーに向かう日本人の女の子が一人だけいたのです。ワーキングホリデー中の彼女は一時帰国を終えて、再びシドニーへ戻るところでした。この格安航空券でちゃんとシドニーに辿り着けるか不安になっていたそうです。海外慣れしていなかった僕も、もちろん不安でした。

結局この便はブリスベンで再度乗り継ぎをして(※そんなこと聞いてません)やっとシドニーへ向かったのです。シドニー到着時刻は夜中の9時を回っていました。シドニー上空を旋回し始めると、眼下にはまばゆいほどの光が満ち溢れていました。そうです!大都会にやってきたのです。期待が膨らむと同時になんとも言えない不安も顔を出してきました。その理由は、本日の宿も何も手配してこなかったからです。「入国審査を終える頃には、一体何時になっているのだろうか?」こんなことを考えながら、入国審査に向いました。

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