14.メルボルン~セカンドワーキングホリデービザ

シドニーでのワーキングホリデー生活も6ヶ月目を迎え、全てが惰性に流されていました。渡豪当初に全身を包んだ新鮮な喜びも素直な感動も影を潜め、ただ月日を重ねるようになっていたのです。”生活のためにアルバイトをする、いただいた給料で生活費を賄う”。この生活には当然のように疑問を抱くようになっていったのです。

オシャレな街メルボルン

「もっと色々な経験をしたい!」、僕の心はまだ見ぬ世界への憧れに再び突き動かされていきます。それには単純にお金が必要でした。十分な資金があれば、もっと自由にたくさんの経験をすることができるのです。気ままにオーストラリア全土を旅することも、再度語学学校へ通い学生生活をエンジョイすることもできます。

ちょうどこの時期、僕らワーホリ仲間の間でセカンドワーキングホリデービザの話が持ち上がっていました。なんでも3ヶ月間の季節労働により、ワーキングホリデービザを1年間延長することができるというらしいのです。この時点では詳細について発表されていなかったのですが、それでも周囲の人間は次から次にフルーツピッキングに出かけていきました(※オーストラリアでは種のあるものは野菜でもフルーツと言います)。セカンドワーキングホリデービザを取得するかどうかは別として、「お金を貯めてオーストラリアをもっと満喫したい」、という気持ちは日に日に強くなっていきました。そして7月、お世話になったJUJUレストランとJPオーストラリアを辞め、7ヶ月間生活をしたシドニーを後にします。


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その後4ヶ月に及ぶフルーツピッキング生活は、僕が当初期待していたようには展開していきません。結果として、オーストラリア大陸を旅する資金も、再度語学学校に通う資金も手にすることはありませんでした。何度も窮地に追い込まれ、ギリギリの生活を経験することになるのです。

市民の足トラム

シドニーを離れるとき所持金は$1000を切ろうとしていました。これが僕の全財産でした。日本にある銀行口座にも残金はなく、クレジットカードも持ち合わせいません。二つのアルバイトを辞めた今となっては、1ヶ月で底を尽く金額です。

フライト前日、ちょっとしたトラブルがありました。購入した航空券の行き先がメルボルンとなっていたのです。僕が予定していた行き先はブリスベンでした。ブリスベンから北上するとフルーツピッキングで有名なバンダバーグという町があります。そこが目的地でした。シドニーから北上するとブリスベン、南下するとメルボルン、反対方向に向かう航空券を手に、しばらくの間時間が止まってしまいました。エージェントの担当者が間違って手配したのか、僕が誤ってメルボルンと発したのかは不明です。慌しい営業の合間に立ち寄って購入したチケット、しっかりと確認することを怠っていたのです。しかし、メルボルンでは語学学校で知り合った友人が働いています。いい機会だと頭を切り替えメルボルンに向かいました。

ウォーキングシグナル

シャトルバスを乗り継ぎメルボルン中心部までくると、この街はどこか洗練された印象を受けました。シドニーではTシャツと短パン・サンダルのオージーファッションもメルボルンでは個々が個性を主張しているようでした。メルボルンには10日間滞在することになります。その間、実にゆっくりと時は過ぎていきました。早朝は庶民の台所ビクトリアマーケットに出かけます。ある日、何気なく海鮮コーナーを歩いているとオイスターのショーケースを見つけました。1ダースで$7という値札に迷わず購入してしまいます。青果売り場でバラ売りのレモンを1個C10で分けてもらい、隣接していた公園でタップリ搾って食べました。この瞬間がメルボルンで一番幸せだったかも知れません(笑)。滞在10日間のうちに三度このオイスターを買ってしまったほどでした。帰国直前にシドニーのフィッシュマーケットでもオイスターを購入しましたが、メルボルンで食した味わいとはかけ離れていました。

メルボルンライブラリー

日中はエアコンのよく効いた立派な図書館へ出かけ、読書かインターネット検索をして過ごしました。夜間はクラウンカジノへ出かけました。メルボルンにあるこのカジノは賭博をするだけでなく、映画館・ゲームセンター・ショッピングセンター・レストラン等が併設された集合施設になっています。よくルールもわからないスロットマシーンで遊んでみたり、シアターで映画「War of the world」を観ました。$7の格安でした。

メルボルンでの締めくくりはグレートオーシャンロードです。グレートオーシャンロードとはメルボルン南西から海岸沿いをひた走るおよそ200キロメートルの道のりを指します。入り口には、「はい、ここからグレートです。」的なアーチがかかっていました。観光客は皆降車して記念写真を撮りまくっていましたが、何の特徴もない海岸線が始まっただけのことでした。見所はその入り口から数時間も先にある”十二使途”周辺です。断崖絶壁に永遠と打ち寄せる波が年間に数ミリずつ岩壁を削り続けた芸術的な造形物を目にすることができます。僕が訪れる2日前に十二使途の一つが崩れ落ち、オーストラリアではちょっとしたニュースになっていました。

数十億年と繰り返し打ち寄せる波、変わらぬようで確実に姿を変える地球、そんな壮大な時の流れの中に僕がここに立つ一瞬が組み込まれていく、、、しばらくの間バッハのG線上のアリアを耳に、悠久の時に想いを馳せ佇んでいました。

グレートオーシャンロード

そんなこんなで消費をして、10日間メルボルンに滞在した僕の残金は$250。この所持金では長距離の移動もままなりません。慌ててハーベストトレイルというサイトで仕事をリサーチして、ミルジュラという町に仕事を求めて出発したのでした。

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